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  • 執筆者の写真西愛礼

『冤罪学』の出版について


「どうすれば冤罪を減らすことができるんだろう。」

私は、未熟なりにこの不相応に大きなテーマについて考えました。 私がたどり着いた答えは、過去の冤罪の原因が放置されて同様の冤罪が再生産されているため、過去の冤罪から学び、この再生産を止めなければならないのではないか、ということでした。

また、尊敬する方々とお話しする機会がある度に「どうすれば冤罪を減らすことができますか?」と聞いて回りました。

それに対しては、「冤罪から学ぶこと」のほかに、「冤罪について教えること」という回答が多かったです。

こういったことから冤罪を減らすためには冤罪から学び、教えないといけないと思うようになりました。

そして、そこまで思い至ったとき、一つの問題に気が付きました。

それは、誰もが冤罪は減らしたいと思いながら、学び、教えるための冤罪に関する知識にアクセスすることが大変だということです。

日本には優れた研究がいくつもありますが、冤罪に関しては原因が多岐にわたるうえ、その各原因や分野ごとに散在してしまっているように感じました。

冤罪について知ろうと思うと、虚偽自白の本や目撃供述の本など分野ごとに勉強して、たくさんの本を読まなければなりません。

確かに、経験豊富な方々はこれらの本をどこかの過程で読まれていることも多いと思うのですが、事件の大小を問わず冤罪が発生し得ることからすれば、ベテランの人だけでなく、1年目の裁判官・検察官・警察官・弁護士・マスメディア等の全ての刑事司法関係者が冤罪について簡単に知る手段があった方がいいはずです。

また、経験豊富な方々をしても、他分野に関する知識や国外で紹介されている知識へのアクセスは容易ではありません。

人がなぜ間違えるのかということを考えた時、認知バイアス等の認知心理学や社会心理学の知見は必要不可欠であり、航空安全や医療安全等の状況も参考になるところ、このような隣接分野の国内外の知見をまとめることは役に立つと思いました。

それだけではなく、刑事司法は裁判官・検察官・弁護士で見えているものが違うように感じられることもありますから、法曹三者において冤罪防止という共通の目標について議論するためには、中立的な共通の土台が必要になると思いました。

このようにして、私は、冤罪を減らすために冤罪を学び教えないといけない、そのためには冤罪という事象そのものの知識化が必要だ、そう考えました。

そこで、冤罪に関する知識を399頁に簡潔かつ体系的に整理し、1冊の基本書である『冤罪学』としてまとめました。

9月30日頃には書店に並べていただけると伺っております。

私のような未熟者が、冤罪という壮大なテーマについて、「~学」という大仰なタイトルで本を出すこと自体おこがましいことなのかもしれません。

しかし少なくとも、冤罪を学び、冤罪から学ぶというテーマだけでも広まってくれたら嬉しいと思います。

上記のとおり、この本は世界中に散らばっている素晴らしい先行研究を集約したものであり、1232個の脚注のおかげで成り立っております。

私だけの力で書いた本だとは全く思っていません。

本を書くことがこんなにも大変だと思っておらず、初めての執筆は本当に苦しい時期が多々ありましたが、それを乗り越えることができたのは、ここに書き尽くせないほどの私の身の回りの皆様の助力があったからでした。

そのような皆様に感謝するとともに、この本が一人でも多くに冤罪に関する知識を届け、そして一人でも多くの冤罪を防ぎ、救うことを願っております。

本書をお手にとっていただき、ご批判を含む更なる研究によって共に「冤罪学」を築いていただけますと幸いです。

2023年9月12日 西 愛礼


冤罪学(目次)

序 章 冤罪を学び、冤罪に学ぶ
___________________________

第1章 冤罪基礎論

第1 冤罪の定義
第2 誤判の定義
第3 冤罪の恐怖
第4 刑事裁判における冤罪の位置づけ
第5 冤罪防止と真犯人の不処罰
第6 冤罪の件数
第7 冤罪の類型
第8 冤罪の研究
___________________________

第2章 冤罪原因論

第1 捜査機関による冤罪創出のメカニズム
第2 弁護人による弁護不奏功のメカニズム
第3 裁判所による誤判のメカニズム
第4 冤罪の構図
第5 四大冤罪証拠
第6 虚偽自白
第7 共犯者の虚偽供述
第8 目撃供述の誤り
第9 科学的証拠の誤り
第10 その他の誤導証拠
第11 社会構造による冤罪の再生産
第12 冤罪の構造
___________________________

第3章 冤罪予防論

第1 冤罪の予防における3つのポイント
第2 冤罪予防に関する基本的な考え方
第3 リスクマネジメント・クライシスマネジメントによる冤罪予防
第4 組織的・集団的な冤罪予防
第5 個人的・個別的な冤罪予防
第6 虚偽自白に関する冤罪予防
第7 共犯者の虚偽供述に関する冤罪予防
第8 目撃供述の誤りに関する冤罪予防
第9 科学的証拠の誤りに関する冤罪予防
第10 小括
___________________________

第4章 冤罪救済論

第1 冤罪の回復不可能性と回復可能性
第2 弁護人による無罪弁護
第3 検察官による不起訴処分・無罪論告・公訴取消
第4 裁判所による無罪判決
第5 再審
第6 冤罪救済支援機関
第7 刑事補償・費用補償
第8 国家賠償請求訴訟
第9 その他の救済手段
第10 残された冤罪救済に関する課題
___________________________

終 章 冤罪を防ぐということ

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