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執筆者の写真西愛礼

プレサンス元社長冤罪事件・国家賠償請求訴訟訴訟提起に際しての山岸忍氏の意見書全文

※事務所ブログの移転に伴い、過去のブログ記事を再投稿いたします。


プレサンス元社長冤罪事件の国家賠償請求訴訟の第1回期日において、冤罪当事者である山岸忍氏が意見陳述を行いましたので、その全文を掲載いたします。


「まずは、この場を設けてくださった、小田裁判長、鷺坂裁判官、柏木裁判官に御礼を申し上げます。


約半年前、私はこの隣の法廷で、無罪判決を宣告されました。

私にとってはあまりにも当然の判決でした。巨額の横領を共謀したとして起訴されたものの、私には全く身に覚えがなかったからです。

さらにその約2年前、私は逮捕勾留されていましたが、嘘の供述をして私を陥れている部下や取引先の社長を、恨んでいました。しかし、その後、弁護士から彼らの取り調べの反訳の差し入れを受け、それを読んで、驚きました。検事が彼らを脅して、嘘の供述をさせていたからです。

突然逮捕され、拘置所に収容されて自由を奪われ、特捜部の検事に脅迫されたなら、誰しも、真実の供述を維持することは難しいです。これは経験した人でないと分かりません。

私も、自分を取り調べた検事のことを、ずっと自分の味方だと思っていました。しかし、騙されていました。実際には、私の担当検事は、弁護人との信頼関係を崩そうとしたり利益誘導をしたりして巧妙に私に自白させようとしていたということが、今となっては、よく分かります。

無罪判決から2週間後、検察は控訴をあきらめ、私の無罪が確定しました。それを聞いた時、私は「ようやく検察が真相を分かってくれた」とほっとしました。

その後、報道機関の方々から話を聞かせて欲しいという申出をいくつもいただきましたが、基本的にはお断りしました。「検察が真相にたどり着いた以上、今後、検察内部で冤罪が生じた理由について検証が行われるだろうから、それに任せればいい」と思っていたのです。

しかし、それから約半年。未だに何らの検証も謝罪も行われず、行われる予定もないようです。

納得ができません。

冤罪によって、私は多くの物を失いました。私が創業し、東証一部上場企業に育て上げたプレサンスコーポレーションは、私の逮捕・起訴によって、倒産の危機に瀕しました。私にとって子供同然の会社です。そして、会社は、従業員・取引先・株主はじめ関係者の方々の生活や事業と密接に結びついています。私のせいで会社を殺し、関係者の方々にご迷惑をおかけするわけにはいきません。だから、私は会社の代表を辞任し、株も手放しました。

また、冤罪事件に巻き込まれたことで、私は莫大な経済的損失も負いました。この裁判で損害として計上したもの以外にも、多くの損害が発生しました。

さらに、逮捕起訴されたことで、手掛けていた事業や、これから手掛けるはずだった事業が頓挫しました。

このような出来事を踏まえても、私自身は、これからの人生を有意義なものにすべく、前を向いて歩いて行きます。

しかし、冤罪でこれだけの被害が出たにもかかわらず、あたかも何も起こらなかったかのように検察は沈黙しています。このまま私が黙っていれば、きっとこの冤罪事件はなかったものとして忘れ去られるでしょう。

誰にだって間違いはあります。検察もそうです。どれだけ優秀な人間がどれだけ一生懸命にやっても、人間である以上、ミスからは逃れられません。ただ、ミスをした時に、そのこと認め、その原因を検証し、改善策を講じなければ、再び、同じ過ちが生じてしまいます。

私が何より許せないのは、私に対する事件が証拠の無視と無理な取調べによって捏造されたものであることについて、検察が何も反省していないことです。これまで謝罪の言葉もありませんし、原因の究明や再発を防止するための方策を講じられてもいません。

普通の企業であれば、不祥事が起こったときに第三者の調査を入れるなどして、原因と再発防止策を講じます。これは組織として当たり前のことです。国の機関は、それをしなくてもいいのでしょうか。

私の無罪判決後、多くの方から「約10年前に大阪地検特捜部が起こした村木事件と同じ構造だ」とのご指摘をいただきました。私の冤罪事件こそが、まさにミスにきちんと向き合って改善を行わなかったことで再び生じた「同じ過ち」そのものだったのではないでしょうか。

私はこの「同じ過ち」を更に繰り返させたくありません。私が冤罪の被害に苦しめられた最後の一人になりたい、そう思っています。


今回の事件について、私は、違法な取り調べをした検事を刑事告発し、また、この国家賠償の訴訟を起こしました。それは、厚生労働省の村木さんのような、また、私のような、冤罪の被害者が二度と生み出されないようにするためです。

検察は見苦しい言い訳をするのではなく、正面から罪を認めて反省してほしいです。これは、検事がいつも被疑者や被告人に言っていることではないでしょうか。

検察が過った原因が何であるのか、その過ちによってどれだけの損害が生じたか、公平で公正な第三者である裁判所のご判断をいただきたく、この裁判を起こしました。私がこの裁判に望むことは一つです。法律的な見地からこの冤罪事件を客観的に検証していただくこと、これに尽きます。

裁判官の方々におかれましては、何卒、適正なご判断をお願いいたします。」


「二度と同じような冤罪事件を起こしてはならない」という山岸氏の願いを実現すべく、その意見書を全文公開させていただいた次第です。




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